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特集 新型ウイルスの最新情報と対応

新型コロナウイルスの感染と病態

飯田俊鈴木忠樹

Pharma Medica Vol.39 No.1, 21-25, 2021

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は,severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)を原因病原体とする新興感染症である。2019年12月に中国・武漢における最初の症例が報告されて以降,SARS-CoV-2の流行は世界中へ急速に拡大した。2020年10月初旬の時点では188の国・地域において3,755万人の感染者が確認され,うち死者数は107万人に達しており,世界的に公衆衛生上の重大な問題となっている。わが国でも2020年1月に初めて感染者が報告され,4月には感染の拡大に伴い政府が緊急事態を宣言したことは記憶に新しい。COVID-19に対する特異的な治療薬やワクチンは確立されておらず,現時点では対症療法が中心である。
感染症に対する治療薬やワクチンの開発には病態への理解が不可欠であるが,特に病原体の局在(どの臓器・組織に病原体が感染しているか)や組織変化(どの臓器・組織にどのような障害が生じているか)を明らかにすることが重要である1)。しかし,呼吸器検体などのウイルス遺伝子検査やウイルス抗原検査,胸部CTでは,病原体の体内局在や組織変化を詳細に捉えることは不可能であり,COVID-19の発病機構および重症化機構を理解するためには,患者の組織検体を用いた病理学的な解析が必須である。本稿では,COVID-19における肺炎やその他の病態について,主に病理解剖を通じて明らかにされた病理学的特徴を交えながら概説する。
「KEY WORDS」病理学,肺炎,血栓症,腎機能障害,心筋障害

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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