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特集 腸内細菌と全身疾患

Ⅱ腸内細菌と代謝疾患

腸内細菌と心血管疾患

吉田尚史山下智也平田健一

Pharma Medica Vol.38 No.12, 57-60, 2020

腸内細菌と肥満・糖尿病などの代謝性疾患や炎症性腸疾患との関連が報告され,腸内細菌への介入により疾患を予防・治療する研究が進められている。心血管疾患も例外ではなく,腸内細菌と動脈硬化性疾患や心不全,そして不整脈との関連も明らかとなってきた。特にわが国では心血管疾患の死因は第2位を占めることから,同疾患に対する新たな予防・治療戦略の確立が求められている。われわれは,高血圧,糖尿病,脂質異常症,肥満,喫煙などの心血管疾患の危険因子に対する適切な介入後も,心血管疾患リスクは残存していることから,それら残余リスクの1つとして腸内細菌叢の異常があるのではないかと考えている。近年の研究により,腸内細菌が生体恒常性維持のマスター臓器として働いていることは疑う余地がなく,心血管疾患における腸内細菌の役割の解明は,われわれの使命である。本稿では,腸内細菌と心血管疾患についてわれわれの研究成果も交えながら概説し,腸内細菌に対する介入が増加する心血管疾患への切り札となるのか,考察していきたい。
「KEY WORDS」腸内細菌叢,TMAO,LPS,Bacteroides

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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