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特集 基礎と臨床から炎症性腸疾患を診る

炎症性腸疾患のマネジメントにおけるバイオマーカーの意義:便中カルプロテクチンや血清LRGをどう使いこなす?

飯島英樹

Pharma Medica Vol.38 No.11, 61-65, 2020

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は,クローン病(Crohn's disease:CD)と潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)を含む,主に若年者に発症する腸管の難治性・再発性・炎症性疾患であり,わが国のIBD患者数は増加の一途をたどっている。一方,IBDの病態解明が進み,腸管の粘膜免疫系の異常な活性化が腸管炎症に関与すると考えられている。それらの研究成果をもとに抗tumor necrosis factor(TNF)α抗体製剤などの新規治療法が開発され,臨床の場でさまざまな作用機序をもつ薬剤が使用できるようになった。IBDの診断や治療効果の判定には内視鏡検査やX線検査などを用いた画像検査が必要であるが,これらは患者への侵襲も大きくコストも高いため,それらを代替できる簡便で非侵襲的なバイオマーカーの探索が続けられている。バイオマーカーとは,客観的に測定され評価される特性値であり,正常な生物学的なプロセス,病理学的プロセスまたは治療的処置に対する薬理学的反応の指標とされており1),特にIBD領域においては治療反応性の評価,治療開始・継続の可否の評価,予後予測などに用いられる(図1)2)。現在,IBDの疾患活動性モニタリングマーカーとして,C反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)が腸管炎症に伴って血清中で検出しうる簡便なバイオマーカーとして広く使用されている。また,ヘモグロビン,赤血球沈降速度(ESR),アルブミンなどの血液検査値も,腸管炎症およびそれに伴って生じる貧血や栄養障害によるIBDの疾患活動性の指標として使われている。2017年には,腸管炎症に伴って糞便中に放出される炎症性物質である便中カルプロテクチンが,UCの病態補助のためのバイオマーカーとして保険収載された。さらに,2020年6月1日に,ロイシンリッチα2グリコプロテイン(leucine-rich α2 glycoprotein:LRG)がIBDの疾患活動性把握の補助のためのバイオマーカーとして保険収載された。本稿では,IBDの疾患活動性モニタリングのために用いられる主なバイオマーカーの特徴について概説する。
「KEY WORDS」粘膜治癒,モニタリングマーカー,便中カルプロテクチン,血清LRG

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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