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一目でわかるクリニカルレシピ

高齢者の動脈硬化予防の食事療法

久米輝善神原萌槇枝亮子遠藤陽子市川和子

Pharma Medica Vol.38 No.10, 74-77, 2020

冠動脈疾患や脳血管障害などを引き起こす動脈硬化性疾患の危険因子としては、加齢、性差(男性、女性の場合は閉経後)、喫煙、肥満(メタボリックシンドローム)、脂質異常症、糖尿病、高血圧などが挙げられます。加齢は動脈硬化性疾患の最も強い危険因子となり、高齢日本人の3人に1人が動脈硬化性疾患で亡くなります。年齢による動脈硬化の程度は、今まで育った社会背景や年齢以外のその他の危険因子による個人差が大きく、個々の状況に応じて対応していく必要があります。一般的に高齢者は複数疾患の併存、症候の非定型性、臓器予備能の低下、薬物代謝能力の低下などの問題点が挙げられ、食事に関しても視力、嗅覚、味覚の低下、消化液の分泌低下、消化管の運動機能の低下などの高齢者特有の注意点があります。たとえば、高齢者においては成人と同様にエネルギー制限をすると栄養のバランスをくずし、かえって低栄養、サルコペニア、フレイルに陥ってしまうこともあります。
動脈硬化性疾患予防の観点において加齢は防ぎようのない因子となりますが、高齢者特有の注意点を理解し、個々の状況に応じた食事療法と運動療法を行い、加齢以外の危険因子をしっかりと管理することで動脈硬化の進行を遅らせることが大切です。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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