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特集 高齢者動脈硬化予防の新展開

高齢者における薬物治療

原眞純

Pharma Medica Vol.38 No.10, 53-56, 2020

動脈硬化は多くの危険因子により複合的に進行するため,これらの危険因子に対し,食事・運動療法や禁煙などの生活習慣指導,および薬物治療で是正することが予防のための対策となる。高齢者は脳心血管疾患を発症しやすく,絶対リスクは高いものの,最も強力かつ介入が不可能な加齢という危険因子が存在することから,他の危険因子に介入することによって得られる発症リスクの低下は若年者と比べて小さくなる。
効果が現れるまでの時間も留意し,治療の優先順位を考えるべきである。血糖コントロールの改善は確かに心血管疾患の発症を抑制するが,効果が明らかになるまでには10年以上の期間を要するかもしれず1),速やかな効果を期待する場合は脂質や血圧への介入を優先すべきであろう2)3)
さらに,動脈硬化性疾患の発症抑制を示したこれまでの大規模介入研究のほとんどが,非高齢者を対象としたものであることに留意すべきである。わずかな例外を除いては,ほとんどの大規模臨床研究では75歳以上の後期高齢者が対象から除外されている。したがって,結果をそのまま高齢者に当てはめることができるとは限らない。
高齢者に薬物治療を行う場合には,こうしたことを念頭に置きながら,より危険が少なく,健康寿命の延長に寄与できる治療を選択することが必要となる。
「KEY WORDS」ポリファーマシー,フレイル,低血糖,過降圧,EWTOPIA 75

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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