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特集 糖尿病性腎臓病(DKD)Basic & Clinical up-to-date 2020 ~進化するDKD治療~

Ⅱ 糖尿病性腎臓病 Clinical 2020 ~Current and Future Therapeutic Strategies~

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬への期待

田口顕正深水圭

Pharma Medica Vol.38 No.9, 69-74, 2020

アルドステロンはミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)に結合し,ナトリウム再吸収や体液調整を司るとともに,その過剰な発現は心・腎を中心とした臓器障害を惹起する。障害時には尿細管細胞以外にポドサイト,血管内皮細胞,炎症細胞などで非古典的なMR発現亢進が認められ,虚血再灌流動物モデルにおいて副腎を摘出すると障害が抑制されることから,アルドステロンが腎障害進展に関与することがわかった。さらに,ステロイド系MR拮抗薬であるスピロノラクトンやエプレレノンの腎保護効果を示す基礎データが蓄積されているほか,臨床研究でもレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬内服中の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者にMR拮抗薬を追加投与すると,血圧低下や尿蛋白減少が確認されている。近年では,糖尿病,肥満,高血圧症,高食塩摂取など生活習慣病に関連する病態においても,腎臓内MR発現が亢進し,腎障害進展に寄与していることが明らかになった。そのなかでも糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)はMR拮抗薬の腎保護効果が期待される代表的な疾患であるほか,近年では非ステロイド系MR拮抗薬であるfinerenoneなどMRをターゲットとした新たな治療薬が開発され,高カリウム血症など副作用への懸念も払拭されつつある。本稿では,最近の知見をもとに,MR拮抗薬を中心としたDKDの治療戦略について概説したい。
「KEY WORDS」ミネラルコルチコイド受容体,アルドステロン,糖尿病性腎臓病,DNAアプタマー,終末糖化産物

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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