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一目でわかるクリニカルレシピ

うつ病と認知症の食事療法

井上幸香本多唯遠藤陽子市川和子石原武士

Pharma Medica Vol.38 No.8, 62-65, 2020

Ⅰ.うつ病
うつ病の治療は、心身の休息や環境調整、心理療法、薬物療法、通電療法などがあり、薬物療法の中心である抗うつ薬や気分安定薬、抗精神病薬の中には食欲減退や増進作用、耐糖能異常をきたすものもあるため、薬物療法の開始に伴う食事摂取不良や体重変化を確認する必要があります。うつ病は発症してからすぐは食欲低下から体重減少をきたす人が多いですが、経過が遷延化した場合は、食生活の乱れや運動不足からメタボリックシンドロームなど生活習慣病に至る場合もあり、食生活の指導は重要な課題といえます。
Ⅱ.認知症
認知症の原因疾患の中でも半数以上を占めるアルツハイマー型認知症 (Aitzheimer's disease:AD) の治療薬の中には食欲不振や吐き気など消化器症状の副作用を生じる場合もあります。認知症における食の問題は、拒食(食べない)、過食(食べすぎる)、異食(食物以外のものを食べる)、盗食(人のものを食べてしまう)など多彩であり、これらの問題から摂食困難となり低栄養をきたす患者も少なくありません。また、ADで合併する高血圧や糖尿病、脂質異常症のすべてを治療した群は、治療しない群と比較し認知機能の低下速度が遅いという結果が報告されています(「認知症疾患診療ガイドライン2017」)。このことからも、これらの生活習慣病の管理を目的とした食事療法は認知症の発症や進行の予防に重要です。食事をすることは生命を維持するために絶対的に必要な行為であるとともに、生活をより豊かにするための活動でもあります。しかし患者さん自身がこの活動を行えなくなる場合も多く、状態に応じてさまざまな支援が必要となります。また、認知症とうつ病を併発しているケースもあり、うつ病が認知症の症状に拍車をかけたり、認知症の発症により、うつ症状が悪化するという悪循環に陥る可能性もあるため、治療内容や症状に合わせた食事調整や環境調整が必要となります。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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