<< 一覧に戻る

特集 高齢者と眼疾患

網膜静脈閉塞症

笹島裕史瓶井資弘

Pharma Medica Vol.37 No.12, 49-53, 2019

網膜静脈閉塞症(retinal vein occlusion:RVO)は,糖尿病網膜症に次いで患者数の多い網膜循環疾患である。特に中高年に発症し,高血圧・動脈硬化が原因となることが多い。RVOは視神経篩状板付近で閉塞する網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion:CRVO)と網膜内の動静脈交叉部で閉塞する網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion:BRVO)に分類される。両疾患は共通点が多い疾患であり,閉塞に伴う静脈圧の上昇により網膜出血や浮腫を生じる。灌流状態によって,虚血型か非虚血型に分類され,黄斑浮腫や網膜虚血による視機能低下が臨床上の問題となる。治療に関しては,抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬の登場により大きく変わった。従来のレーザー治療に比べ抗VEGF療法のほうが良好な視力予後が得られるようになったため,現在RVO治療は,抗VEGF薬の硝子体内注射が第一選択となっている。一方,両疾患の相違点として,BRVOの約1/3は自然軽快傾向があること,虚血型のBRVOは症例によっては視力良好であるが,虚血型CRVOは大半が視力0.2以下となり,半数近くが虹彩ルベオーシスを生じ,さらに血管新生緑内障に至ると失明の危険性があることが挙げられる。本稿では,RVOの病態と抗VEGF薬の作用機序および有効性,そして今後の課題について考えたい。
「KEY WORDS」網膜静脈閉塞症(RVO),抗血管内皮増殖因子療法(抗VEGF療法),硝子体内注射,黄斑浮腫,網膜虚血

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る