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特集 高齢者と眼疾患

緑内障と加齢

前川重人中澤徹

Pharma Medica Vol.37 No.12, 29-32, 2019

現在日本は超高齢社会に突入してきている。2005年に老年人口割合は20%だったのが,2030年には32%,さらに2055年になると41%となることが推定されており,高齢化社会がさらに進むことが予想されている。このような長寿社会のなか,健康的な日常生活を送るうえで視機能はとても重要な機能であり,中途失明は生活するうえで最も大きな障害と考えられる。このように視機能に関連する眼疾患は解決すべき疾患であり,そのなかで緑内障は重要な疾患として位置づけされている。緑内障とはどのような疾患であるか。これは“視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である”と日本緑内障学会で定義されている1)。つまり,眼球内には網膜と呼ばれる部位が存在し,その一部である網膜神経節細胞が眼圧を含めた様々な要因によりアポトーシスを起こすことで,視神経乳頭陥凹拡大(図1)と神経線維の菲薄化が進み,それに一致する視野障害を認め,さらには進行を示すとされている。さらに近年の疫学調査では,緑内障患者の有病率は40歳以上の人口のうちの5%とされ,中途失明原因の第1位であることが報告されており(図2)2),今後さらに有病率が上昇し,失明患者が増加する可能性が高いことが示唆されている。眼圧は唯一下降させることにより緑内障の視野進行を遅くすることができる危険因子であり,現在緑内障治療のすべてが眼圧下降を目的としたもので構成されている3)4)。しかし,日本における疫学調査では,日本の緑内障患者の7割以上が,眼圧が正常範囲内にある「正常眼圧緑内障」であること5),また,海外で行われた大規模臨床試験において,正常眼圧緑内障に対し眼圧治療効果を十分に行っているにも関わらず,発症や視野進行をきたす症例が数多く存在することがわかってきた6)。このように,緑内障に対する診断や治療は,眼疾患のなかで重要な課題となっている。
「KEY WORDS」緑内障,加齢,酸化ストレス,血流,認知症

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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