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特集 白血病診療の新展開

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病の治療

杉浦勇

Pharma Medica Vol.37 No.10, 33-37, 2019

フィラデルフィア染色体(Philadelphia chromosome:Ph)陽性急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)は,転座遺伝子t(9;22)(q34 ; q11.2)がキメラ遺伝子BCR-ABL1を形成し,恒常的に産生されるBCR-ABL1融合蛋白がABL1チロシンキナーゼ活性を働かせて発症する。その発生頻度は年間人口10万人当たり1人以下と非常に稀ではあるが,急性白血病のなかでもきわめて予後不良な疾患であった。それまでの治療法はPh陰性ALLと区別はなく強力な化学療法を用いて血液学的完全寛解(complete hematological response:CHR)に導入するが,とにかく速やかに同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation:alloHSCT)を実施することであった。しかし,ABL1活性の特異的阻害薬[チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)]であるイマチニブ(IM)が約15年前に導入されると,治療効果が画期的に改善された。また,BCR-ABL1 messenger RNAをRQ-PCR法で測定することで,微小残存腫瘍(minimal residual disease:MRD)量を確認し治療効果を確認することができる。
「KEY WORDS」フィラデルフィア染色体,BCR-ABL1,チロシンキナーゼ阻害薬,ダサチニブ,ポナチニブ

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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