20年前には,わが国の肝細胞がんのほとんどがウイルス肝炎から発生していた。近年,ウイルス肝炎を背景としない「非B非C型肝がん」が増加の一途を辿っている(図1)1)。これまでの調査から,非B非C型肝がんは糖尿病などの生活習慣病の合併が多いことがわかっているが,依然効率的なサーベイランスが行われておらず,半数以上が進行した状態で診断されている。非B非C型肝がんの背景疾患として,飲酒を伴わない脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD),特にそのなかでも進行性の非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)が注目されている。本稿では増加する非B非C型肝がんとその重要な背景肝疾患であるNASHについて概説する。
「KEY WORDS」肥満,メタボリックシンドローム,糖尿病,脂肪肝