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特集 パーキンソン病診療最前線

最新の診断法 ③嗅覚検査

馬場徹

Pharma Medica Vol.37 No.4, 31-34, 2019

パーキンソン病(Parkinson's disease;PD)では寡動/無動・筋強剛・安静時振戦および姿勢保持障害といった運動症状に加えて嗅覚障害・自律神経障害(便秘・排尿障害・陰萎・起立性低血圧・発汗異常)・睡眠障害・痛み・うつ・不安および認知機能障害など多彩な非運動症状を認める1)。PDにおける喚覚障害はAnsariとJohnsonらによって1975年に初めて記載されたが2),その後の研究によりPD患者の8割以上に認められるきわめて一般的な症状であることが明らかとなった。現在では嗅覚障害は4主徴の1つである振戦よりも高頻度に認められる非運動症状として,2015年に発表されたPD臨床診断基準においても早期診断に有用な支持的所見の1つに位置付けられている3)
嗅覚障害は一般にニオイ検知の障害と識別の障害に分けられるが,PDでは約75%にニオイ検知閾値の上昇(ニオイに気付きにくい)を,約90%にニオイ識別覚の障害(何のニオイか判別できない)を認めるとされる4)。その他の特徴としては,嗅覚障害はPDの運動症状に数年先行して出現する・PDの診断時には嗅覚障害はすでに両側性に出現している・嗅覚障害の程度は運動障害/認知機能障害の重症度や治療内容とはあまり関連せず経過を通してほぼ一定である,といったことが挙げられ,嗅覚障害はPDの運動症状出現以前にすでに大部分完成していると考えられている。
「KEY WORDS」非運動症状,嗅覚障害,嗅覚伝導路,認知機能障害,予後予測

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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