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特集 超高齢社会の健康長寿を脅かす脊椎疾患―最新のトピックス―

【神経障害】腰部脊柱管狭窄症の外科治療

武中章太

Pharma Medica Vol.37 No.1, 21-25, 2019

腰部脊柱管狭窄症の治療は原則保存療法であるが,漫然と保存療法を続けた結果,筋力低下や安静時のしびれが遷延し,術後の改善に乏しいことも珍しくない。数ヵ月~1年の保存療法を行っても症状の改善が認められない場合には,患者の日常生活動作(activity of daily living;ADL),仕事・家庭環境を考慮して手術を検討すべきである1)。手術に至る腰部脊柱管狭窄症は大別すると,「単純な」腰部脊柱管狭窄症と「変性すべり」を合併した腰部脊柱管狭窄症がある。後者は単に腰椎変性すべり症と呼ばれ,手術適応症例においては腰部脊柱管狭窄症の併存が含意されることが多い。
脊椎の手術は原則,①進入経路と②手術の内容(除圧か固定か)の2つの観点から理解することができる。進入経路の観点からは,「後方手術」と「前方手術」(前方もしくは側方からのアプローチ)に分けられる。手術の内容の観点からは,神経の圧迫を解除するための「除圧術」と脊椎の不安定性を解消するための「固定術」に分けられる。具体的には,①除圧術単独の手術,②除圧術に固定術を併用する手術(後述のPLIF,TLIF),また,③固定術のみを行い間接的除圧を期待する手術(後述のXLIF,OLIF)の3通りに大別することができる。腰椎変性すべり症に対する除圧術と固定術の比較はよく議論の的になるが,そもそもすべり症の定義自体が確定的でなく,除圧術,固定術ともにいくつもの術式を含んでおり,単純な結論は原理的に不可能に思える。しかし,比較的新しいシステマティックレビュー2)では,椎間関節の50°以上の矢状化,6.5mm超の椎間板高,下肢痛より腰痛が有意,動態撮影による2mm超の不安定性,後方支持組織の切除は除圧術のみでの危険因子になりうるとしている。また,固定術を選択する場合は除圧術に比して,侵襲が大きくなりやすいこと,術後隣接椎間障害,高コスト,感染リスクの上昇も考慮に入れる必要がある。
手術療法を選択した際の優先順位を単純化すれば,①安全の確保,②除圧(および固定)の達成,③低侵襲性といえる。視野が狭すぎるなど,術中に安全が確保できないと判断されれば,術式変更を考慮すべきであるし(本来は術前に判断しておくことが望ましいのはいうまでもない),除圧や骨移植が不十分な低侵襲手術は本来の目的を達成しておらず,許容されるべきではない。以下に歴史的経緯を加味しつつ,腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術と固定術について,術式ごとにその特徴と問題点を述べてみたい。
「KEY WORDS」腰部脊柱管狭窄症,腰椎変性すべり症,顕微鏡下手術,内視鏡下手術,側方経路腰椎椎体間固定術

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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