特集 糖尿病治療薬の循環器系への作用~その光と影~
DPP-4阻害薬
Pharma Medica Vol.36 No.6, 41-45, 2018
インクレチンは食後の血糖値上昇に伴い腸上皮細胞から分泌される消化管ホルモンで,なかでも十二指腸のK細胞から分泌されるglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)と,小腸下部のL 細胞から分泌されるglucagon-like peptide-1(GLP-1)が有名である。これらインクレチンは流血中に分泌され,膵臓β細胞表面の受容体に結合してインスリン分泌を促進させ,さらにα細胞の受容体に結合してグルカゴンの分泌を抑制することにより血糖降下作用を惹起する。一方,dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)はセリンプロテアーゼの1つであり,T細胞などの免疫系細胞表面にもCD26として発現しており,分化マーカーの1つとされている。Adenosine deaminase(ADA)と結合して細胞内情報伝達を調節する働きも有しているため,adenosine deaminase complexing protein 2(ADABP)とも呼ばれる。DPP-4は広く血中・組織中に分布しており,インクレチンを分解・不活性化するため,このDPP-4の阻害薬が有効な糖尿病治療薬とされ,開発されている1)。事実,現在日本で最も多く使用されている経口糖尿病治療薬はDPP-4阻害薬である。本稿では主にDPP-4阻害薬の心血管系に与える効果について考察したい。
「KEY WORDS」インクレチン,DPP-4,DPP-4阻害薬,GLP-1
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