特集 糖尿病治療薬の循環器系への作用~その光と影~
メトホルミン
Pharma Medica Vol.36 No.6, 21-25, 2018
メトホルミンは現在の2型糖尿病治療における経口血糖降下薬の第一選択として世界的に推奨されており,その地位を確立している。2006年に初めて米国糖尿病学会(American Diabetes Association;ADA)と欧州糖尿病学会(European Association for the Study of Diabetes;EASD)から提唱されたコンセンサスはその後もアップグレードされており,現在では,合併症がない限り糖尿病と診断された時点で,生活習慣への介入と同様,メトホルミンの投与開始を提唱している1)-3)。
そもそもビグアナイド薬はマメ科の多年草であるガレガソウ(別名フレンチライラック)の成分に由来する。基本骨格となるグアニジンが1926年に発見され,欧州および日本でも1950年代から販売されている。1970年代,米国にてフェンホルミンでの乳酸アシドーシスに起因する死亡例が相次いだことで,その後米国ではビグアナイド薬は販売中止となった。わが国では当時メトホルミンの販売中止には至らなかったが,使用量制限や適応制限がなされ一時使用頻度が減少した。しかしその後メトホルミンの優れた血糖降下作用や安全性が確認されたことで4),1997年に米国で販売が再開され,日本では2010年から海外同様に2,250mgまでの高用量が使用可能となり,使用頻度が増加していった5)。
ビグアナイド薬にはフェンホルミン,ブホルミン,メトホルミンの3種類があり,わが国ではブホルミン,メトホルミンの2剤が使用可能である。
「KEY WORDS」メトホルミン,心血管イベント,心保護作用,AMPキナーゼ
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