特集 CKD診療のトピックス
糖尿病性腎症の病理と予後
~高血圧性腎硬化症との差異を中心に~
Pharma Medica Vol.36 No.1, 45-49, 2018
糖尿病性腎疾患は,わが国をはじめ多くの国における末期腎疾患の主要な原疾患である。しかし,腎障害の発症や腎機能障害および蛋白尿の進行パターンは,症例によって大きく異なる。したがって,臨床データおよび病理所見を用いたリスク分類は,治療や予後予測のうえで重要である。腎生検標本を用いた近年の臨床病理学的検討により,糖尿病性腎症の病理学的変化はこれまで知られていた以上に特徴的であり,臨床病期ごとの病理所見が,それぞれ予後予測に重要であることが明らかになった。さらに,糖尿病性腎症と高血圧性腎硬化症の臨床・病理学的所見とを比較すると,微量アルブミン尿および推算糸球体濾過率(eGFR)が保たれている症例群においては,2群間の病理所見にはほとんど差がないことが明らかになった。この知見は,糖尿病性腎症の発症,進展機序を考えるうえで重要と思われる。今後,早期の腎病理評価を含めて検討を進めることにより,糖尿病性腎症の病理学的な発症・進展機序が解明されることが期待されている。
「KEY WORDS」糖尿病性腎症/高血圧性腎硬化症/腎予後
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。