特集 肥満症とメタボリックシンドローム:予防医学と治療医学の観点から
肥満症・メタボリックシンドロームの病態発症メカニズムにおける脂肪組織炎症現象の意義
Pharma Medica Vol.35 No.11, 21-24, 2017
メタボリックシンドロームの概念は,内臓脂肪型肥満を背景として耐糖能異常,脂質異常,血圧上昇などの病態が並行して進展し,糖尿病,高血圧症,慢性腎臓病,動脈硬化症などの生活習慣病が集積するというものである。肥満は代謝性疾患としてだけではなく,全身性にかつ低レベルでの炎症が遷延する慢性炎症という概念で捉えられるようになり,また分子機構に関する研究も著しく進歩してきている。脂肪組織では脂肪滴を含んだ実質細胞である成熟脂肪細胞に加えて,脂肪前駆細胞・上皮細胞・線維芽細胞・免疫担当細胞といった間質細胞が存在し,それらが相互作用することによって組織の恒常性を維持していると考えられている。肥満では脂肪の過剰蓄積による脂肪細胞の肥大化とともに血管新生,マクロファージ(M Φ)やリンパ球を中心とする炎症細胞の浸潤,間質の線維化,アディポカイン産生調節の破綻のようなダイナミックな変化が認められる。本稿では脂肪組織での慢性炎症が脂肪組織自身に対して,どのような変化を起こしているのか,また臓器間ネットワークを介したメタボリックシンドロームの惹起,さらには不可逆な生活習慣病への進展におけるメカニズムについて概説し,その治療展望について考察したい。
「KEY WORDS」メタボリックシンドローム/脂肪組織マクロファージ/脂肪組織慢性炎症/脂肪組織リモデリング
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。