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特集 高齢者の肺炎:社会・医療問題の克服を目指して

高齢者肺炎予防におけるワクチン接種の重要性

森本浩之輔

Pharma Medica Vol.35 No.8, 37-40, 2017

高齢化が進む社会における肺炎は,その原因,背景因子,重症度の組み合わせで性格が異なり,非常に多様な疾患といえる1)。起炎病原体でいえば,市中肺炎において優位な肺炎球菌やインフルエンザ菌,免疫能が低下した患者における緑膿菌やクレブジレラに加え,呼吸器病原ウイルスは20%超の患者において検出される。また高齢者においては誤嚥も重要な原因である。高齢者肺炎の多様性は,予防による疾病コントロールを困難にしている。
このような高齢者肺炎にあって,ワクチンは重要な予防のためのツールである。肺炎に対して直接予防効果が期待できるワクチンは,2種類の肺炎球菌ワクチンのみであり,その特徴を理解して利用することが重要である。肺炎球菌は90以上の血清型に分類され,そのうち原因菌の頻度が高いものからワクチン含有株として取り入れられており,23価莢膜ポリサッカライドワクチン(PPV23)と13価蛋白結合型ワクチン(PCV13)が使用できる。また,インフルエンザワクチンも,間接的に成人の肺炎を予防することが示されている。
成人肺炎の一部を,これらのワクチンが予防できるというエビデンスは揃いつつあるが,個人の肺炎を予防できる確率は限定的といえる。その真の有用性を十分理解するためには,正確な疫学とワクチンの医療経済学的な費用対効果を知る必要がある。最も単純には,一定の人口に対してワクチンを接種するコストと,そのワクチン接種で肺炎を予防することにより削減できる医療費を比較する,直接医療費の削減効果がわかりやすい。
「KEY WORDS」高齢者肺炎,予防,肺炎球菌ワクチン,インフルエンザワクチン

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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