特集 高齢者の肺炎:社会・医療問題の克服を目指して
高齢者肺炎の治療の実際
~治療のゴールをどこに置くか~
Pharma Medica Vol.35 No.8, 13-16, 2017
わが国における肺炎の死亡数は,2016年においておよそ114,000人であり,2011年以来死亡原因の第3位となっている1)。また肺炎患者の98%以上は60歳以上の高齢者である2)。われわれの施設における市中肺炎入院患者の18年間の検討3)においても,重症化率は60歳未満の若年者で12.9%であるのに対して60歳以上の高齢者では21.7%と高く,死亡率も若年者群の2.0%に対して高齢者群では5.5%であった。高齢者の肺炎は予後不良なcriticalな疾患であると考えられる。
このような高齢者肺炎の増加を背景として,2011年に日本呼吸器学会は,海外での医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia;HCAP)の概念を基として医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia;NHCAP)という新しい肺炎の概念を提唱した4)が,高齢者肺炎の多くはこの範疇に入るものと考えられる。その後,高齢者肺炎について臨床的検討が相次いで報告されるようになり,また,高齢者肺炎の扱いについても社会的関心が高まり,2017年4月には肺炎診療ガイドラインも改訂された5)。本稿では,この新ガイドラインも踏まえつつ,高齢者肺炎の治療をどのように行っていくかを考えてみたい。
「KEY WORDS」高齢者肺炎,ガイドライン,抗菌薬,緩和医療
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。