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特集 睡眠障害:超高齢社会における実態とその対策

高齢不眠症患者への薬物療法

和田大和澤田将幸黒田健治神林崇

Pharma Medica Vol.35 No.3, 39-43, 2017

高齢不眠症患者への薬物療法を考えるにあたり,まずは加齢に伴う不眠症の発現メカニズムを考慮する必要がある。睡眠は恒常性維持機構と体内時計機構の2つのメカニズムの相互関係により生じ,さらに恒常性維持機構は,睡眠欲求と覚醒維持欲求のバランスによって成り立っている。つまり,①日中に適度に活動し疲れることによって睡眠欲求が増し,②夜に薄暗くなったところで,③覚醒維持する必要のない静かで安全な環境のなかに身をおく,ことで自然な眠りが生じるのであり,このいずれかが障害されると不眠に陥ると考えられる。高齢者の場合は,図1に示すように,①日中の運動量や五感の低下により覚醒刺激が減弱し,その結果日中の活動性が低下し疲れないために睡眠欲求が高まらず,②白内障や光を感受する神経系の機能低下の影響で明暗のめりはりが失われ,③夜間頻尿や痒み,痛み,呼吸機能の低下など身体的な問題も加わり夜間の安静が保ちにくくなる,といった生理的な変化が契機となり,不眠症に陥りやすくなる。実際に若年者と高齢者の睡眠を比較した研究では,加齢に伴い,睡眠相の前進,中途覚醒の増加,徐波睡眠やREM睡眠の減少,実睡眠時間は同じでも臥床時間が長くなるといった睡眠効率の低下,メラトニン分泌パターンの変化といった睡眠構造の変化がみられると報告されている1)(図2)。
「KEY WORDS」恒常性維持,体内時計,メラトニン,オレキシン,ベンゾジアゼピン

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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