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特集 膵癌への挑戦

膵癌に対する周術期補助療法の意義

阪本良弘有田淳一中井陽介長谷川潔伊佐山浩通國土典宏

Pharma Medica Vol.35 No.1, 53-58, 2017

浸潤性膵管癌は消化器癌のなかで最も難治であり,わが国の2013年のがん患者の死亡数で肝臓癌を抜いて第4位となった1)。膵癌の治療成績の向上には集学的治療が必要で,術後補助療法に関するエビデンスは,米国,欧州,日本において行われてきたランダム化比較試験(randomized clinical trial;RCT)の結果から徐々に確立されてきた経緯がある。
一方,術前に化学療法や放射線療法による補助療法を行い,腫瘍量を減少させたり,病期を低下させたりしようとする試みは1980年代から行われてきたが,その報告は限られたものであった2)3)。化学療法の大幅な進歩とともに,局所進行膵癌や切除可能境界膵癌の術前補助療法に関する第Ⅱ相試験の報告が2000年頃から大幅に増加した4)5)。しかし切除可能膵癌に対する術前補助療法の有用性を証明した第Ⅲ相試験はまだ存在しない。
本稿では膵癌術後補助療法の歴史的変遷と,2016年現在の術前補助療法に関するエビデンスについて概説する。
「KEY WORDS」浸潤性膵管癌,術後補助療法,術前補助療法,切除可能境界

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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