<< 一覧に戻る

特集 大腸癌診療 update 2016

大腸癌の免疫逃避機構を標的とした治療戦略

山口敏史朴成和

Pharma Medica Vol.34 No.12, 61-64, 2016

PD-1遺伝子は1992年に京都大学の本庶研究室においてクローニングされた1)。その後,T細胞に発現し抑制シグナルを受ける受容体としての機能が明らかにされ,2000年以降にPD-L1(B7-H1,CD274)およびPD-L2(B7-DC,CD273)がPD-1のリガンドとして同定され,PD-1による免疫逃避機構のメカニズムが明らかとなった。免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法の対象は,悪性黒色腫においてその効果が実証され,さらに肺癌,腎癌,頭頸部癌に広がり,その他の固形癌においても有望視されている。しかし,固形癌を対象とした抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(cytotoxic T-lymphocyte antigen 4;CTLA-4)抗体や抗PD-1抗体の第Ⅰ相試験では,大腸癌における奏効例はほとんど認められず,他癌腫での臨床開発が優先されている2)。そのなかで,2015年米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)の総会にて,DNAミスマッチ修復機構(mismatch repair;MMR)が不十分な切除不能進行再発大腸癌に対する抗PD-1抗体ペンブロリズマブの良好な治療成績が発表された3)。その後,2016年のASCOにおいてもMEK阻害薬と抗PD-L1抗体薬,抗PD-1抗体薬と抗CTLA-4抗体薬の併用療法などで奏効が得られたことなどが相次いで報告された4)5)。本稿では,大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後の治療戦略について概説する。
「KEY WORDS」大腸癌,PD-1,PD-L1,CTLA-4

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る