特集 大腸癌診療 update 2016
大腸癌のバイオマーカーと個別化医療
Pharma Medica Vol.34 No.12, 39-44, 2016
大腸癌は世界で3番目に罹患数が多く,4番目に死亡数が多いがんである1)。わが国においても大腸癌は男女ともに罹患率が増加しており,年間約125,000人が罹患し,約48,000人が死亡している。しかし薬物療法を中心とする治療の進歩に伴い,進行再発大腸癌に対する治療成績は改善傾向にあり,近年の第Ⅲ相試験における全生存期間の中央値は約30ヵ月と,20年前の2倍以上にまで延長している2)-5)。
このような進行再発大腸癌における治療成績向上の背景の1つに,バイオマーカーに基づく個別化医療の開発がある。バイオマーカーとは「通常の生物学的過程,病理学的過程,もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として,客観的に測定され評価される特性」と定義され6),診断(diagnostic)や予後予測(prognostic),治療効果予測(predictive)に用いられる。たとえば乳癌におけるHER2遺伝子増幅は,負の予後予測マーカーかつ抗HER2療法の治療効果予測マーカーでもある。本稿では,近年目覚ましく進歩している進行再発大腸癌における各種バイオマーカーの開発と,それらを用いた個別化医療について解説する。
「KEY WORDS」RAS,BRAF,ミスマッチ修復,次世代シークエンス法,リキッドバイオプシー
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