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特集 大腸癌診療 update 2016

大腸癌手術の現状と将来展望

板橋道朗小川真平山本雅一

Pharma Medica Vol.34 No.12, 15-21, 2016

大腸癌に対する手術法は他の癌手術と同様,先人の築いた知識と技能の伝承からのコンセンサスにより形成されてきた。そしてその成果により,大腸癌研究会の大腸癌全国登録のデータによれば,20年間で大腸癌の5年生存率は著明に向上している1)。また,諸外国と比較してもわが国の大腸癌の手術成績はトップレベル(5年生存率は男性で1位,女性で6位)であった2)。これは,確実なリンパ節郭清を行う手術手技の普及と術後補助療法,再発後治療などの治療発達の総合的成果である。さらに大腸癌治療ガイドラインが作成され,エビデンスに基づく標準的治療法が示され,治療法の均てん化がなされてきた。従来から日本の手術では,中枢方向のリンパ節郭清を重視したD3郭清が行われてきた。欧米でも日本同様に中枢方向のリンパ節郭清を重視するようになってきている3)。いまだ結論を得ることができていないclinical questionが残されており,これらに対して近年のさまざまな大規模臨床試験により明らかとなりつつある。近年の大腸癌治療の進歩として,腹腔鏡手術をはじめとする低侵襲治療と直腸癌に対する自然肛門温存率の向上があげられる。本稿では大腸癌手術の現状と課題について論じ,将来展望についても言及する。
「KEY WORDS」腹腔鏡手術,自然肛門温存,QOL,術後機能障害

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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