「はじめに」産婦人科診療は,以下の4つの分野に分けられる。腫瘍(主に癌治療など),生殖・内分泌(月経異常や不妊治療),周産期(妊娠・分娩),そして,女性のヘルスケア(更年期障害や子宮脱,生涯にわたるライフサポート)である。それぞれの分野にツールとして,腹腔鏡・子宮鏡下手術などの鏡視下手術が活躍する。それぞれの分野は互いにオーバーラップするが,その目的,優先すべき事項は異なってくる。また,婦人科で扱う臓器は,子宮・卵巣などであり,それ自体は生命に直接かかわらない。しかしながら,新たな生命を生み出すという,非常に重要な機能に関わる臓器である。術後の妊孕能温存手術や,妊娠中の手術など,患者本人の生命のみならず,妊娠した場合の胎児の生命にも影響する可能性があり,未来につながる医療ともいえる。腹腔鏡自体,婦人科の不妊検査から広まっていった経緯があり,本稿では,鏡視下手術の歴史的背景を考察しながら,婦人科分野の腹腔鏡下手術について述べたいと思う。
「KEY WORDS」産科・婦人科,reproductive surgery,電動モルセレータ,子宮体癌,癌生殖医療