「はじめに」多発性骨髄腫は,高齢者に発症する難治な造血器腫瘍であるが,65歳以上の高齢者では,一般に自家造血幹細胞移植(autologous stem cell transplantation;ASCT)は適応にならない。したがって,移植非適応症例では,薬物治療の進歩がそのまま治療成績の向上に直結する。移植非適応の多発性骨髄腫に対しては,1960年代からメルファランとプレドニゾロンによるMP療法が行われてきたが,多剤併用化学療法や造血幹細胞移植(stem cell transplantation;SCT)に比較して奏効率(response rate;RR)では劣るものの,全生存期間(overall survival;OS)では差がなかったため,長らく初回標準療法として認められてきた。しかしながら,2000年代に入りプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブおよび免疫調節薬(immunomodulatory drugs;IMiDs)であるサリドマイド,レナリドミドが導入されるようになり,高齢者をはじめ移植非適応の多発性骨髄腫患者における治療成績は大幅に向上するようになった1)。
「KEY WORDS」多発性骨髄腫,新規治療薬,自家幹細胞移植,維持療法