「はじめに」日本におけるインフルエンザ迅速診断キットの歴史は,1999年に日本ベクトンディッキンソン社から発売されたディレクティジェンFluA(図1)から始まった。このキットは酵素免疫法を原理としたもので,ナイロン膜上に検体を吸着させ,洗浄液で洗浄後,モノクローナル抗体を滴下し,基質を加えて発色させる4つのステップが必要であった。発売当時はザナミビルやオセルタミビルのようなノイラミニダーゼ阻害薬はなく,A型インフルエンザウイルスにのみ有効なアマンタジンが治療薬として承認されているに過ぎなかった。キットも海外製ということもあり,A型インフルエンザが陽性であるか否かを判定するものであった。しかしながら,ベットサイドにおいて20分程度で結果が判定できるということは,臨床症状を主体としてインフルエンザを診断していた医療現場にとっては画期的なものであった1)。
「KEY WORDS」インフルエンザ,迅速診断キット,銀増幅イムノクロマト法,着色セルロース微粒子