「はじめに」インフルエンザ脳症は,インフルエンザウイルス感染を契機に発症する急性脳症である。急激な全身炎症で始まり,脳浮腫・多臓器不全に至る経過から,炎症性サイトカインの過剰産生(サイトカインストーム)が主な病態と考えられた。メチルプレドニゾロンパルス療法や大量ガンマグロブリン療法などの抗炎症療法を中心としたガイドライン(2005年作成,2009年改訂)が普及してからは,致死率が30%から10%以下にまで改善した。一方で後遺症が25%と依然多く,抗炎症療法の効果が低い“痙攣重積型脳症”などの多様な病態が明らかになってきた。本稿ではインフルエンザ脳症についてこれまでに解明された点と今後の問題点について,ガイドラインを中心に紹介する。
「KEY WORDS」インフルエンザ脳症,サイトカインストーム,抗炎症治療,痙攣重積型