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野巫医のたわごと

(185)飛び入学と落第(1)

前田貞亮

Pharma Medica Vol.33 No.10, 72-73, 2015

文化庁長官を務めた河合隼雄氏の「縦糸横糸」の中に,“飛び入学と平等主義・天性を認める社会へ提言”という文章がある。原論文は産経新聞1998年3月31日に載ったものであり,他の論文と共に単行本にまとめたものである。その論旨とする所は,数学,物理学においてずば抜けた才能を持つ者に17歳で大学に入学することを認めた千葉大学の制度に賛成し,欧米では小学校で「飛び級」や「落第」のある所も多いとし,この制度は確かに長短半ばとするが,国際化の世の中を迎え賛成すべきだというものである。河合氏がスイスで学校の先生方と話した際に,“日本には「落第」がない”と言うと,彼らから“日本ではそんな不親切なことをしていていいのか”と問われたという。学力に応じて「飛び級」や「落第」がある欧米型親切と,個人の学力差を認めない絶対平等主義の日本型親切であるが,飛び級は確かに能力差を持ったその人に利益があるが,それを能力差と認めず,悪平等を強制すべきではない。それは能力のある人の足をひっぱり,創造的な人の能力を抑え込むおそれがある欠点を持つものである。第二次世界大戦後に民主化という改革に内蔵された誤った平等主義である。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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