「はじめに」腸管,皮膚,泌尿器,生殖器には多数の常在細菌が棲息している。近年,常在細菌の同定法として,16S ribosomal RNAを指標とした分子生物学的手法が用いられるようになり,その全貌が明らかにされつつある1)。たとえば,ヒト腸内には1,000種を超える腸内細菌が常在しており,その数は便1gあたり,それぞれ1011から1012個とされている2)。腸内細菌の機能面に関する研究も急ピッチで進んでおり,続々と新知見が明らかにされている。筆者らは,生直後より定着してくる常在細菌叢は宿主にとって重要な外界因子の1つであることから,「腸内細菌叢は脳神経系の発達や機能にも深く関与している」,という作業仮説を立て,さまざまな人工菌叢マウスを作製し,研究を進めてきた3)。その結果,腸内細菌叢は宿主のストレス反応や行動特性を決定する重要な外界因子であることを明らかにした。本稿では,筆者らのデータを踏まえて,腸内細菌と精神発達との関連について概説する。
「KEY WORDS」腸内細菌,行動特性,ストレス反応,脳腸相関
「KEY WORDS」腸内細菌,行動特性,ストレス反応,脳腸相関