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特集 パーキンソン病診療update

プリオン仮説

The prion hypothesis in Parkinson's disease.

長谷川隆文

Pharma Medica Vol.33 No.7, 9-13, 2015

「はじめに」アルツハイマー病やパーキンソン病(Parkinson's disease;PD)などに代表される神経変性疾患において,病変部位における異常凝集したミスフォールド(折りたたみ異常)蛋白の沈着は病理学的指標であるばかりでなく,神経細胞死につながる重要なステップであると考えられている。長い間,異常凝集蛋白の蓄積とこれに続く神経変性は,個々の細胞においてそれぞれ独立して起こるもの(cell-autonomous)と推定されてきた。しかし近年,異常蛋白が細胞間を伝播し周囲へと病変を拡大させるという,細胞非自律的(non-cell-autonomous)な病態機序が提唱され,従来の病態概念が大きく変化してきている。細胞間伝播現象は,プリオン病でみられるものと類似の現象であることからプリオン様伝播とも記述され,伝播の可能性のある蛋白を総称して,プリオノイドと呼称される場合もある。プリオン様伝播は,変性疾患に共通した病態パラダイムとして,新たな治療ターゲットとなり得る可能性もある。本項ではPDの患者脳内神経細胞に蓄積するαシヌクレイン(αS)を中心に,細胞間伝播現象について最近の知見を概説したい。
「KEY WORDS」αシヌクレイン,プリオノイド,細胞間伝播,パーキンソン病,小胞輸送

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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