特集 肝癌の薬物療法
分子標的治療薬 ソラフェニブ
Sorafenib.
Pharma Medica Vol.33 No.1, 25-28, 2015
「はじめに」肝細胞癌に対して,分子標的治療薬であるソラフェニブのプラセボに対する予後延長効果が,2007年米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)で報告された。これは,肝細胞癌の薬物療法としてはじめてランダム化比較試験(randomized control trial;RCT)にて予後延長効果を示した質の高いエビデンスであった。わが国では2009年5月よりソラフェニブが肝細胞癌に用いることができるようになり,すでに5年以上が経過している。2014年11月で,ソラフェニブは約24,000例もの症例に用いられている。
「Ⅰ.ソラフェニブの薬理」1.薬剤開発の経緯
ソラフェニブは,癌遺伝子が関わる細胞内シグナル伝達経路のうち,非受容体チロシンキナーゼの1つであるRaf-1を標的として開発された分子標的治療薬である1)。その後,血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor;VEGFR)-1,2,3や血小板由来増殖因子受容体(platelet-derived growth factor receptor;PDGFR)-βなどの受容体チロシンキナーゼの阻害作用が示されるようになり,現在は多岐に渡るキナーゼに対して抑制作用をもつという意味で,マルチキナーゼインヒビターといわれている。
「KEY WORDS」●ソラフェニブ ●マルチキナーゼインヒビター ●SHARP試験 ●Asia-Pacific試験
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。