「Ⅰ.肝動注化学療法」肝細胞癌は,そのほとんどが慢性肝疾患(慢性肝炎,肝硬変)に合併しており,これに伴う汎血球減少と肝予備能低下から殺細胞性抗癌剤の全身投与の際に問題となる骨髄抑制などの毒性が前面に出やすいため,治療効果を発揮できるだけの十分量の抗癌剤を投与できないことが背景にあり,殺細胞性抗癌剤による全身化学療法は不向きである。このため,肝切除をはじめラジオ波焼灼療法や肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)などの局所療法が広く行われているのが現状である。殺細胞性抗癌剤の使用は,より少ない抗癌剤で副作用を少なく,最大限の効果を発揮できるよう,カテーテルを用いた肝動注化学療法が主に行われている。肝動注化学療法の対象は,「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」1)に掲載されている治療アルゴリズムでは,肝障害度がAあるいはBで,4個以上の多発例,「日本肝臓学会推奨のコンセンサスに基づく肝癌治療アルゴリズム」2)では,Child-Pugh AあるいはBで,4個以上の多発例,または脈管浸潤例である。動注化学療法は,Seldinger法にてカテーテルを挿入し,薬剤を単回で動注する方法と,リザーバーシステムを留置し,繰り返し動注を行うリザーバー動注化学療法の2種類がある。どちらの方法を選択するかは,患者の状態や使用する薬剤の特徴による。
「KEY WORDS」●肝動注化学療法 ●シスプラチン ●ミリプラチン ●エピルビシン ●low-dose FP療法