特集 肝癌の薬物療法
肝動脈塞栓術 血管塞栓用ビーズ
Hepatic arterial embolization:Microsphere for arterial embolization.
Pharma Medica Vol.33 No.1, 15-19, 2015
「はじめに」1980年代にわが国で開発された原発性肝細胞癌(以下,肝癌)に対する肝動脈塞栓術は,抗癌剤とヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル(リピオドール)の懸濁液を加える肝動脈化学塞栓療法(lipiodol-transarterial chemoembolization;Lip-TACE)へと進化した1)2)。2002年にはLip-TACEを行うことで肝癌患者の予後を延長させることができるというエビデンスが示された3)4)。第18回全国原発性肝癌追跡調査報告によると,肝癌と診断された後の治療は,肝切除・肝移植といった外科的療法が31.7%,局所療法が30.6%,肝動脈塞栓療法が26.5%で行われている5)。これらの治療が現在,肝癌治療の三本柱といえる。一方,欧米では球状塞栓物質(ビーズ)が開発され,標準的な塞栓物質となっていった。わが国では,医療ニーズは高いが国内では承認されていない血管塞栓材4材について,日本IVR学会からの要望により検討がなされ,多血性腫瘍および動静脈奇形での有用性が2009年1月の厚生労働省「第10回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」に報告された。検討会で審議の結果,早期に導入されるべきものとの結論となった。このうち3材については,2014年1月からわが国での使用も可能となった。わが国での使用経験は限られている。本稿では海外のデータを基にビーズを用いた肝動脈塞栓術の現状を捉え,その行方,将来性を展望してみたい。
「KEY WORDS」●肝動脈塞栓術 ●肝癌 ●球状塞栓物質 ●ビーズ
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