<< 一覧に戻る

NEXT DOOR 脂質管理の新しい潮流

No.1 PCSK9阻害薬の登場が臨床にもたらす影響

寺本民生

Pharma Medica Vol.32 No.10, 75-77, 2014

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012年版)」は,現状に至るまでに数回の改訂を経てきた。臨床での脂質管理の状況も,本ガイドラインの改訂に伴い変遷を続けてきたが,本邦では新たな脂質異常症治療薬としてPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬などの開発治験が進行中で,脂質管理はまた1つ大きな節目を迎えようとしている。そこで,ガイドライン作成を主導されている寺本民生先生に,脂質管理の変遷および今後の展望について伺った。

動脈硬化性疾患予防ガイドラインの変遷

◆近年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインの変遷について,いくつかお伺いします。本ガイドラインは,以前は「治療ガイドライン」と称されていましたが,「予防ガイドライン」へと名称が変更されたのには,どのような背景があるのでしょうか。

 2000年代の前半までは,本邦では脂質異常症に対する治療が十分に普及しておらず,脂質異常症,ひいては脂質異常症が引き起こす動脈硬化性疾患に対する治療の重要性を広く浸透させる必要があったため,2002年版では「動脈硬化性疾患治療ガイドライン」という名称が用いられました。その後,スタチン等の薬剤が普及し,動脈硬化性疾患が十分に加療されるようになり,脂質異常症診療における目標が治療より前段階の予防へと変わっていきました。また,そもそも日本人では,動脈硬化性疾患の発症頻度が欧米人と比べると低いという背景もあり,治療を意識するより,予防に努めることのほうが現実的と考え,2007年版より「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」と変更されました。

◆2007年版から現在の2012年版への改訂では,冠動脈疾患のリスク評価が相対的評価から絶対的評価に変更されました。これにはどのような意図があるのでしょうか。

 2007年版では患者さんが有する冠動脈疾患リスクを健常者に対する相対リスクで評価していましたが,これでは個人が有するリスクを真に評価することが難しく,やはり絶対的評価でリスクを個々に評価したほうが明確で,患者さんも理解しやすいと考えました(図1)1)。

そこで2012年版では,絶対リスクを採用することとなり,年齢や性別,血圧,コレステロール値等から,冠動脈疾患の絶対リスクを評価するリスク評価チャートが取り入れられました(図2)1)。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る