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野巫医のたわごと

(169)コーヒー

前田貞亮

Pharma Medica Vol.32 No.6, 74-75, 2014

「何だ・何だ!?」, 「何だー?」・・・・. 武原寮の食堂前に寮生達がどやどやと集まって来た. 午前7時少し前, 昭和15(1940)年9月末のことである. 「武原寮」とは, 旧制浦和高等学校の寄宿寮. 平常は8時10分の学校の授業開始少し前にならないと, 食事に来る寮生はさほど多くない. しかし今回は6時半を少し回った頃から, 東・西六寮の廊下に漂いはじめたコーヒーの香りに吸い寄せられるように集まって来たのである. 今でこそ, コーヒーはポピュラーな飲み物だが, その時代は高級な飲み物として扱われ, 毎日簡単に飲むなんてことは出来なかった. まして学生は尚更である. 筆者なども浦和の寮生活をしていて, 土日に東京の自宅に帰る時, 省線電車(現・JR)を1駅, あるいは2駅程歩いて5銭(往復10銭)を節約した分で喫茶店に入り, コーヒーを味わったものである. 東京は銀座に, その昔, 「ブラジルコーヒー」という店があった.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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