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文学にみる病いと老い

第77回 「母,美しい老いと死」アンヌ・フィリップ 著,吉田花子 訳

長井苑子泉孝英

Pharma Medica Vol.31 No.10, 204-208, 2013

女性は男性より長命である. おそらく, このためであろうが, 父を看取ることを描いた作品はいくつもあるが, 母を看取る作品は少ない. このような思いをしている時, フランスの作家が描いた高齢の母を看取る作品, 「母, 美しい老いと死」に出会った. 私自身, 現在, 母を看取っている. 昨年の春に自宅でめまいのために転倒して, 左大腿骨頸部骨折で手術, リハビリ中に病室で転倒し, また右大腿骨頸部骨折*1で手術となり, 95歳だった母は, もう二度と自分の足で歩くことはないだろうと予想されていた. 2ヵ所の病院生活半年が過ぎ, 老人保健施設*2に移動したのが昨年の秋. 以来, 施設での日々が継続されている. 知人は, 高齢者が施設に入ると, すぐに認知症*3が進みますよと心配してくれた. 管理のいきとどいた施設であるが, 入居者の8割以上は認知症である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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