<< 一覧に戻る

特集 めまい:診断と治療

特集にあたって

Introduction.

喜多村健

Pharma Medica Vol.31 No.10, 7, 2013

めまいを訴える症例は多く, 原因疾患は多岐にわたるため, さまざまな領域の臨床家が遭遇することの多い病態である. しかし, めまいの病態を他覚的に的確に把握し, 診断することは, 必ずしも容易でない. そのため, めまいを主訴とする症例を診察する際には, 十分な根拠がないが「メニエール病」あるいは「メニエール症候群」と診断し, 一般的な抗めまい薬であるメシル酸ベタヒスチンを投与してしまうこともある. こういった背景を考慮して, 今回の特集では, めまいを主徴とする疾患のなかで, 最も頻度の多い「良性発作性頭位めまい症」を取り上げた. 本疾患は, 特有な病歴, 平衡機能検査から, 診断は比較的容易であり, しかも有効な治療法が確立されている. そのため, 本疾患を十分理解することで, 幅広いめまい診療が可能となる. さらに, めまいを呈する疾患では有名な「メニエール病」の基本を再度把握できるように解説を加えた. また, 頻度は少ないが, めまいを呈する中枢神経系疾患の鑑別はきわめて重要で, その要点も示した. めまいの病態を診断する検査としては, 眼球運動検査と前庭誘発筋電位を取り上げた. 眼球運動検査は, めまい診療では基本的な検査であり, そのポイントを再確認していただきたい. 前庭誘発筋電位は, 最近, 臨床応用が進み, めまいの検査のツールとして新たに加わっているが, いまだ認知度は低いため, 1つの項目として解説を加えた. 多種の基礎疾患を有する高齢者のめまい診療は, 最も難渋するめまい診療の1つであり, 本特集でも取り上げた. また, めまいの診療において, 最近のトピックスとなっているのが, 片頭痛ならびに睡眠障害に伴うめまいであり, 以前からめまいは心因性疾患との密接な関連が指摘されており, それぞれの項目について専門家から詳細な報告を掲載した. めまいの主な治療は薬物治療であり, 現時点での薬物治療についてのまとめは, 日々の診療に有用であり, 今後のめまい診療における課題ならびに夢も参考にしていただきたい. 最後に執筆者を代表して, 本特集が読者による毎日のめまい診療において, 少しでも役に立つように希望している.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る