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特集 整形外科領域と再生医療

特集にあたって

越智光夫

Pharma Medica Vol.31 No.4, 7-8, 2013

山中伸弥教授が昨年10月にiPS細胞の作製でノーベル賞を受賞して以来, 再生医療に対する国民の注目と期待は急激に高まっており, 再生医療の実用化に強烈な追い風が吹いている. 第二次安倍内閣による経済政策いわゆるアベノミクスにおいて財政出動や金融緩和に続く「三本目の矢」として成長戦略がうたわれており, 安倍首相による施政方針演説では, その成長戦略の重要項目として再生医療があげられた. これまで日本から, iPS細胞以外にも, 再生医療に関する数多くのすばらしい研究報告がされてきたが, 再生医療の実用化・産業化という面では基盤整備が十分とはいえず, 主に小泉政権下で起業されたいくつかの医療系ベンチャー企業も, 研究成果を臨床で実用化するために医薬品医療機器総合機構(pharmaceuticals and medical devices agency;PMDA)から治験確認申請の適合が得られず, 姿を消している. これまでに日本で製造販売承認を得た細胞・組織加工製品は自家培養表皮「ジェイス(R)」と, 筆者が取り組んできて技術移転した自家培養軟骨「ジャック(R)」の2製品しかなく(いずれも株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの製品), 再生医療の実用化において明らかに韓国の後塵を拝している. しかし今年になり, 再生医療に関する承認にかかる審査期間を短縮するための薬事法の改正に関する検討が開始され, 経済産業省が今年の2月に公表した試算で再生医療の国内市場規模が2030年には1.6兆円に膨らみ, 2050年には3.8兆円に達すると見込まれるなど, これから数年間における動向次第では, 再生医療が次世代の医療における大きな柱となる可能性が出てきた. 一方, 超高齢化社会を迎えるわが国の医療においては, 単なる寿命よりも, 日常的に介護を必要とせず自立した生活ができる期間を示す「健康寿命」が重要視されるようになり, 健康寿命の延伸のためには, 体を動かすために必要な骨・軟骨・神経・骨格筋などの主に整形外科が取り扱う領域の組織・器官に対するケアが特に重要となる. また, 整形外科は軟骨再生などをはじめ, 早くから再生医療の研究・臨床が進んだ領域でもある. 余談だが, 前出の山中教授は元整形外科医で, 数年前に再び日本整形外科学会会員として復帰もされており, 整形外科は再生医療を先導すべき立場にある領域だといえるだろう. そこで本特集では, 「整形外科領域と再生医療」をテーマに, 骨・軟骨・神経(脊髄および末梢神経)・骨格筋といった整形外科領域の組織別に, 臨床研究あるいは臨床を目指した基礎研究を行っているエキスパートの先生方に, これまでの研究成果についての概説をお願いした. また, 腱・靱帯といった他の組織に比べてバイオロジーが未開拓な分野では, 最新の分子生物学的知見について解説していただいた. 本特集を一読していただければ, 現時点での整形外科領域における最先端の再生医療が理解できるものと確信している.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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