はじめに  非結核性抗酸菌(Nontuberculous Mycobacterium;NTM)とは,結核菌以外の培養可能な抗酸菌の総称であり,主に肺に慢性感染症(肺NTM症)を惹起する。NTMは土壌や水回りなどに生息する環境寄生菌であり,結核菌と異なりヒトからヒトへの感染は否定されている。結核菌の検出が診断に絶対的意味があるのに対して,NTMの検出は必ずしも病気としてNTM症を意味しない。肺NTM症の診断には診断基準1)を満たす必要がある。  本稿では肺NTM症の治療指針について,日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会(以下,対策委員会)と日本呼吸器学会感染症・結核学術部会合同で作成した「肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解-2012年改訂」2)(以下,改訂見解)の解説を中心に行う。外科療法については,対策委員会が2008年に発表した「肺非結核性抗酸菌症に対する外科治療の指針」3) (以下,外科指針)を概説するにとどめる。 KEY WORDS ●治療指針 ●肺MAC症 ●肺カンサシ症 ●日本結核病学会