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結核と非結核性抗酸菌症

院内DOTSと地域連携DOTSの現状

DOTS in hospital and hospital-community health partnership.

藤田明

Pharma Medica Vol.30 No.6, 33-36, 2012

はじめに
 直接服薬確認療法(Directly Observed Treatment, Short-course;DOTS)とは,1995年に世界保健機関(WHO)が提唱し,政府の関与を明記したDOTS戦略が由来であり,日本では2000年に「日本版21世紀型DOT戦略」として退院後の服薬支援体制について厚生省(当時)が各自治体に通知したのが始まりである。DOTSを「対面服薬治療」,DOTを「服薬監視」などと訳されたため,目の前で服薬させることがDOTSそのものであると誤解されがちであるが,行政や関係機関が協力して結核の治療完遂のために患者を支援する包括的なしくみと理解すべきである。そして法的根拠として,感染症法では主治医によるDOTSの指示・実施が規定されており,「医師は,結核患者を診療したときは,本人またはその保護者若しくは現にその患者を看護する者に対して,処方した薬剤を確実に服用することその他‥‥必要な指示を行わなければならない。」と書かれている。

KEY WORDS
●DOTS ●結核 ●クリニカルパス ●地域連携

Ⅰ.DOTSの必要性

 結核の治療を成功させることは結核患者を減らすために有効であるということが公衆衛生上の前提になっている。2010年の日本の結核統計によると,喀痰塗抹陽性初回コホート失敗脱落割合は4.7%であり,持続排菌者や耐性菌による新たな結核感染者を産む要因となっている。治療中断の理由については,保健所からの連絡に対して応答がない,疾病や治療への理解が不足している,経済的問題や就業・就学問題を抱えている,などの課題が指摘されており,抗結核薬の服薬指導だけでは解決しない問題がある。したがって,結核医療に関わるすべての関係機関が協力して患者の服薬を支援することが重要である。
 2011年,結核に関する国の特定感染症予防指針が改正され,DOTSの推進の具体的目標値として「2015年までに全患者に対するDOTSの実施率を95%以上とする」ことが掲げられている。ちなみに2007年において,喀痰塗抹陽性肺結核患者に対する医療機関のDOTS実施率は87%であった。

Ⅱ.日本版21世紀型DOTS戦略の改正

 2011年の新結核予防指針では,患者のニーズに合った医療を提供できるよう「患者中心の医療提供体制」を整備することがあげられている。改正「日本版21世紀型DOTS戦略」では医療が必要な全結核患者がDOTSの対象となり,院内DOTSの実施にあたって新たに「DOTSチームケアによる患者中心の包括的支援」をすることが掲げられている1)。すなわち,患者自身がチーム医療の一員として,主体的に治療に取り組めるような体制をつくることが求められている(図)。

Ⅲ.さまざまなDOTS

 DOTSの方法について整理しておきたい。入院中の患者に行うのが院内DOTS(入院DOTS)で,通院中や退院後の患者には地域DOTSとして①外来DOTS(薬局DOTS),②訪問DOTS,③連絡確認DOTSの3つのDOTSがある(表)。

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