はじめに  結核の治療は,一般的には比較的容易である。治療が順調に経過する条件は,耐性結核菌でないこと,副反応が起こらないことである。しかし,合併症のある症例では,結核の治療と合併症の治療を両立させなければならず,工夫や注意すべき点がある。  リファンピシン(RFP)は肝臓においてチトクロームP450を誘導し,各種薬剤[ステロイド,免疫抑制薬,抗ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus;HIV)薬,糖尿病治療薬など]の代謝を促進する。その結果,併用薬剤の血中濃度の低下をもたらし,基礎疾患の悪化をきたすことがある。したがって,薬剤の組み合わせには十分注意し,可能であれば併用薬剤の血中濃度のモニタリングも考慮すべきである。その結果によっては併用薬剤の増量が必要な場合がある。  ここでは,種々の合併症をもつ結核患者の治療戦略について述べる。 KEY WORDS ●結核 ●腎障害 ●肝障害 ●HIV感染症 ●妊娠