はじめに  現在,結核は世界で認められている標準治療を行えばほぼ確実に治癒させることができる疾患になった。しかし,治療を実施するうえではさまざまな障害がある。1つは服薬期間が最短でも6ヵ月と長く,治療の中断が起こりやすいことである。これに対しては保健所を中心とした直接服薬確認療法(Directly Observed Treatment, Shortcourse;DOTS)が成果をあげている。治療を阻害する第2の要因は副作用である。検査値の上昇も含めれば2~3割の患者に何らかの異常がみられる。第3には薬剤耐性菌である。薬剤耐性菌に感染し発病することもあるが,前述の2つのいずれかのため,十分な治療が行われなかった結果としてもたらされることが大半である。標準治療の軸となるイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)両薬に耐性の多剤耐性結核になると,治療は18ヵ月以上を要し成功率も低い。初回の治療を確実に行い感染性を消失させ治癒させること,治療によって薬剤耐性菌を作らないことは,社会に対する責任でもある。本稿では,標準治療の適切な治療および頻度が高い副作用への対応を中心に述べる。 KEY WORDS ●ピラジナミド ●薬剤性肝障害 ●結核医療の基準 ●リファンピシン