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血小板をめぐる最近の話題

(トピックス)血小板と肝線維化

A novel link between platelets and liver fibrosis.

小玉尚宏竹原徹郎

Pharma Medica Vol.30 No.5, 55-58, 2012

はじめに
 肝臓は非常に再生能力の高い臓器であるが,肝細胞傷害が持続する状況下においては,創傷治癒反応の1つとして肝臓内にコラーゲンなどの線維が蓄積することが知られている1)2)。慢性肝炎ならびに肝硬変はこの肝線維化を病態の中心とする疾患であり,その要因はC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)ならびにB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)の持続感染やアルコール,胆汁酸,脂肪酸など多岐に渡る。しかし慢性肝炎・肝硬変はその要因によらず,進展すると肝不全や肝細胞癌などの致死的な疾患につながることから,肝線維化進展抑制を目指した治療法の確立は喫緊の課題である。一方,進行した肝硬変患者は肝線維化進展の結果として高頻度に血小板減少を合併し,肝線維化stageと血小板数の間には非常に密接な負の相関関係が存在する1)2)。われわれは最近この肝線維化進展のバイオマーカーとして知られる血小板自体が抗線維化作用を有していることを同定した3)。また,in vivoにおいて血小板減少状態が肝線維化を増悪させることを明らかにし,血小板が肝線維化進展に対する新規治療標的となる可能性を見いだした3)4)。そこで本稿では,血小板の知られざる作用の1つとして肝線維化との関連について概説する。

KEY WORDS
●血小板減少 ●肝硬変 ●肝星細胞 ●コラーゲン

Ⅰ.肝線維化と血小板減少

 肝線維化とは,種々の外的刺激や炎症により肝細胞が壊死・脱落した部位に,コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスが沈着する現象であり,肝臓における創傷治癒反応の1つと考えられている1)2)。しかし,ウイルス感染・胆汁酸・脂肪酸やアルコールといった細胞障害性の刺激が肝内で慢性的に生じる状況下においては,肝細胞の消失・再生が反復・持続し,これに伴って病的な肝線維化反応が継続することで慢性肝炎/肝硬変の病態が形成される。すなわち,反復的な肝細胞の消失・再生は肝臓内小葉構造や類洞構造の破壊を引き起こし,細胞外マトリックスの過剰産生・蓄積は肝細胞の再生を阻害し,結合織同士による偽小葉形成を誘導する。その結果,正常な肝細胞機能の消失により腹水貯留や肝性脳症,黄疸などの肝硬変症状が出現し,また門脈圧亢進により脾腫,汎血球減少や静脈瘤形成などの肝硬変に特徴的な合併症が引き起こされる1)2)。肝線維化進展の最も有用なバイオマーカーとして古くから知られているものが血小板であり,ウイルス肝炎などを原因とした慢性肝炎ならびに肝硬変においては病態の進行に伴い血小板数が低下し,肝線維化進展と非常に密接な負の相関関係を有している5)。この二次的な血小板減少の原因としては,門脈圧亢進に伴う脾機能亢進症により脾臓における血小板破壊が亢進することや,肝細胞の消失による肝臓でのトロンボポエチン(TPO)産生低下が巨核球・血小板産生を減弱させることなどがあげられており,つまりは肝線維化進展の結果と考えられてきた5)-7)。しかし一方,この血小板減少が逆に肝線維化の病態形成にどのような影響を有するかについては現在まで詳細な検討は行われていない。近年,血小板はその生理学的な凝固・止血機能のみならず,組織修復,血管新生など多彩な機能を有していることが明らかにされており,肝臓領域においても炎症や再生との関連が報告されている8)9)。また,ウイルス肝炎や胆汁鬱滞性肝障害などの肝線維化を生じる疾患において血小板が肝内に集積することが報告されており10)11),血小板は肝線維化に対して重要な役割を果たしている可能性が示唆されるが,現在までその作用は明らかにされていない。

Ⅱ.血小板の抗線維化作用

 そこでわれわれは血小板の肝線維化に対する作用を検討するため,肝線維化進展に中心的な役割を果たす肝星細胞に着目して実験を行った。肝星細胞は,正常な肝臓においてはビタミンAを貯蔵した円形の細胞としてDisse腔に存在しているが,慢性炎症や肝細胞傷害などの刺激により活性化され,その形態を筋線維芽細胞様に変化させる12)。この活性化した肝星細胞は,肝内の障害部位へ遊走し,Ⅰ型コラーゲンを中心とした細胞外マトリックスを産生することで肝線維化を形成する13)14)。われわれはまずC57BL/6Jマウスから単離した初代培養肝星細胞とマウス血小板の共培養を行い,血小板が肝星細胞からのⅠ型コラーゲン産生を抑制するという抗線維化作用を有していることを見いだした(図1A)3)。

また単離した肝星細胞をin vitroでの継代培養により活性化筋線維芽細胞へと誘導した後にマウス血小板と共培養を行った場合においても,血小板は同様の抗線維化作用を有しており,またこの作用は血小板の濃度依存的であることが明らかとなった(図1B)3)。この際,血小板膜表面のCD62p発現増強や,培養上清中におけるsoluble CD62p濃度の増加を認め,血小板は肝星細胞との共培養により活性化していた。そこでトロンビンにより活性化させた血小板の上清のみを肝星細胞に投与したところ,肝星細胞のⅠ型コラーゲン産生は同様に抑制された。さらに血小板内に含まれる種々の液性因子に関してこの抑制効果との関連について検討を行い,血小板からの肝細胞増殖因子(hepatocyte gronth factor;HGF)による肝星細胞のMet経路活性化がこの抑制効果に必須であることが明らかとなった。以上の検討結果よりわれわれは,血小板がHGF/Met経路を介して肝星細胞のⅠ型コラーゲン産生を抑制するという新規の抗線維化作用を明らかにした。

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