はじめに  特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP)は,血小板数が10万/μL以下に減少する自己免疫疾患である。国内では特定疾患治療研究事業の対象疾患(56疾患)に指定されており,医療費の一部は公的負担される。国内の患者数は,約2万人である1)。標準的治療であるヘリコバクター・ピロリ除菌療法,副腎皮質ステロイド療法,脾臓摘出術(脾摘)を行っても,血小板数が3万/μL以下の難治例が存在し,その割合は全体の約10%に相当する。血小板数が3万/μL以下のITP患者の死亡リスクは,健常人よりも約4倍高いことから,治療が必要となる2)。これまで難治例に対する治療法として,免疫抑制薬,蛋白同化ステロイド,抗癌剤などが経験的に用いられてきたが,治療効果が限定的であること,副作用も多く,健康保険の適応外使用にあたることから,治療に苦労することが多かった。近年,難治性ITPに対する画期的な治療法として,巨核球造血を促進し,血小板数を増加させるトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬(ロミプロスチム,エルトロンボパグ)が国内でも承認された3)。この新薬は,難治例の約80%に有効性を示すことから,ITP診療を大きく変えた。なお,国内では悪性リンパ腫の治療薬として承認されている抗体医薬リツキシマブは,欧米では脾摘に代わるITP治療法として広く使われている4)。TPO受容体作動薬とリツキシマブが広く使われるようになり,米国血液学会は15年ぶりにITP診療ガイドラインを改訂した5)。2012年4月,国内の班会議が作成した「ITP治療の参照ガイド2012」も公表された6)。本稿では,新しいガイドライン,新薬TPO受容体作動薬とリツキシマブの医師主導治験(厚生労働科学研究)について解説する。 KEY WORDS ●特発性血小板減少性紫斑病(ITP) ●トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬 ●リツキシマブ