<< 一覧に戻る

血小板をめぐる最近の話題

(基礎編)先天性巨大血小板症の分子機構

Molecular mechanisms for congenital macrothrombocytopenia.

國島伸治

Pharma Medica Vol.30 No.5, 15-19, 2012

Ⅰ.巨核球と血小板
 血小板は,骨髄巨核球から産生される直径2μmの円盤状の無核の血球で,末梢血液中に約20万/μL存在する。巨核球は,細胞分裂を伴わない核内分裂と細胞質の成熟を繰り返して多倍体化し,分化・成熟後,巨核球1個あたり数千の血小板を産生する。電子顕微鏡を用いた骨髄標本の観察により,成熟した巨核球では細胞質に分離膜が形成・分割され,血小板が産生されると考えられてきた。

KEY WORDS
●αⅡbβ3 ●Filamin A ●GPⅠb/Ⅸ ●MYH9 ●巨核球 ●胞体突起形成

Ⅰ.巨核球と血小板(続き)

in vitroでの巨核球培養では,巨核球からは多数の糸状の細長い胞体突起が形成され,所々に生じる膨隆部分が血小板として産生される1)。生きた動物を用いた生体内イメージング解析では,巨核球は分化に伴い骨組織辺縁から類洞周囲に移動・集族,血管内に胞体突起を伸ばし,血流により剪断され流血中に放出される血小板が観察される2)(図1)。

Ⅱ.血小板機能とその異常

 正常な止血機構は,血小板,血管壁,凝固線溶因子の有機的連関のうえに成り立つ(前稿「血栓形成の分子機構;血小板機能異常症の解析からみた最近の進歩」を参照)。巨核球の分化・成熟,血小板産生および血小板機能発現の異常は,血小板の量的異常(血小板増多症,血小板減少症)および質的異常(血小板機能異常症)となり,出血傾向や血栓・塞栓症の原因となる。血小板減少症をきたす原因は多岐にわたるが,血小板の産生障害,破壊亢進および脾機能亢進に大別できる。多くの場合は後天的要因により起こる。先天的要因による血小板減少症はきわめてまれであると考えられてきたが,日常臨床において十分遭遇する頻度で存在し,確定診断がつかないために特発性血小板減少性紫斑病と診断され,副腎皮質ステロイドなどによる不必要な治療を受ける症例が少なくないこともわかってきた。先天性血小板減少症は,血小板の大きさに従い,小型血小板性,正常大血小板性および巨大血小板性に分類される3)。表に先天性巨大血小板症の分類を示す。

Ⅲ.先天性巨大血小板症

 血小板の骨格は,細胞質全体に網目状に存在するアクチン線維を基盤とした細胞骨格と血小板膜を裏打ちする膜骨格から構成され,血小板形態の保持および変化において重要な役割を果たす。また,血小板膜上に発現する膜貫通型受容体の細胞内領域は細胞骨格と結合することにより細胞骨格と膜骨格を相互連結するに加え,信号伝達にも働く4)。血小板細胞骨格蛋白の異常が血小板形態の異常,すなわち巨大血小板症を引き起こすことは想像に難くない。最近,信号伝達の異常による巨核球の分化・成熟異常は胞体突起形成に障害をもたらすことにより巨大血小板産生へと至ることが報告されている。以下に,先天性巨大血小板症の病態と明らかになりつつある巨大血小板産生の分子機序について概説する。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る