はじめに  現在の精神科臨床において,発達障害のある成人への医療対応は,その需要の高さと診断の困難さから,今後,慎重に丁寧に拓いていく必要があると実感している。  それは,依頼された表題がすでに,診断(評価)と支援(治療)には一定の意義をもたせながら,問題点もあることを前提にしている点からも自明である。  筆者自身も発達障害のある成人を前にその意義と課題を抱えて,四苦八苦している。その現在進行型の苦悩を共有していただくことを,とりあえずの本論の目的にしたい。 KEY WORDS ●発達障害 ●成人期 ●診断 ●治療