はじめに  国内における注意欠如・多動性障害(attension deficit/hyperactivity disorder;ADHD)の診断・治療ガイドライン1)によると,「ADHD治療は,親ガイダンス,学校との連携,子ども本人との面接と薬物療法を組み合わせて行うのがわが国の臨床家の間では一般的であり,これらをADHD治療の基本キットとする」,「子ども本人に対する・・ソーシャルスキルトレーニング(SST),親への・・ペアレントトレーニング(PT),虐待が問題となる場合の児童相談所との連携,・・不適応の深刻化に対処する入院治療などは,より専門性の高い治療技法である。各地域で医療機関,教育機関,福祉機関などが連携して,これらを適切に提供できるように努めるべきである」と述べられている。米国児童青年精神医学会(AACAP)のガイドライン2)においては,「薬物療法と行動療法が治療の二本の柱。これに関係諸機関との連携と家族支援を加える」となっており,さらに「問題行動の軽減だけでなく,適応行動を増やしていくなかで,長期的視野で家族,教師,友人らとの対人関係の改善,学業や作業の達成度の向上,セルフエスティームの改善も含めること」として治療のゴールの考え方を示している。  そして,これらの心理社会的治療のなかで,PTの有効性はAACAPだけでなく,英国ガイドライン(NICE)3)やカナダガイドライン(CADDRA)4)などでも認められており,SSTや成人例への認知行動療法についてはNICEなどで推奨されている。  本稿では,これらの治療的考え方をさらに「支援」として拡げ,国内での現状をふまえ,心理社会的支援の中心となる連携と家族支援について筆者らの取り組みを述べたうえで,ADHDの心理社会的支援をめぐる今後の課題について述べる。 KEY WORDS ●ADHD ●心理社会的支援 ●ペアレントトレーニング ●家族支援