はじめに  現在,発達障害に含まれる主要な病態は,広汎性発達障害(pervasive developmenral disorder;PDD),注意欠如・多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder;ADHD),学習障害(learning disorders;LD)であるが,歴史的には知的障害,運動発達障害,発達性協調運動障害,発達性言語障害,てんかんなどを包括する概念とされる。本稿で対象とするのは前者であるが,主な症状である認知障害,注意障害,コミュニケーションの障害などは非特異的な症状であり,脳器質的疾患,身体疾患による類似症状との鑑別を慎重に行う必要がある。閉塞性呼吸障害に起因する睡眠障害は,日中に不注意,衝動性などのADHD様症状を呈することも知られている。その身体疾患を治療することで発達障害と疑われる症状は消退する。  タイトルである「発達障害と間違われやすい身体疾患」はこのような病態を示すと思われるが,脳に原因があることが明確であるてんかんにおいても,一部の症候群では一過性に発達障害類似の症状が顕著に認められることがあり,治療によって改善が期待できる場合もある。また,知的障害,行動障害が初期症状としてみられることの多い神経疾患も重要な鑑別疾患である。本稿では主に幼児期から学童期に受診した場合を想定し,鑑別疾患を検討する。 KEY WORDS ●睡眠障害 ●内分泌疾患 ●アレルギー性疾患 ●てんかん ●脳腫瘍 ●代謝・変性疾患 ●染色体異常 ●神経皮膚症候群 ●薬剤