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発達障害の診断と治療・支援をめぐって

広汎性発達障害の診断・評価について

Diagnosis and assessment of PDD.

金重紅美子本田秀夫

Pharma Medica Vol.30 No.4, 9-13, 2012

Ⅰ.広汎性発達障害の診断

 広汎性発達障害(pervasive developmental disorders;PDD)は,自閉性障害(小児自閉症)を中核とし,アスペルガー障害(症候群)などを含む障害群概念である。米国精神医学会(American Psychiatric Association;APA)の定める精神疾患の診断・統計マニュアルの最新版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th edition, Text Revision;DSM-Ⅳ-TR)1)によれば,幼児期から持続する対人交流の異常,コミュニケーションの障害,行動,興味,活動の限局した常同的で反復的なパターンによって特徴づけられ,そのために日常生活に支障をきたす状態とされている。

KEY WORDS
●広汎性発達障害(PDD) ●自閉症 ●診断 ●評価

Ⅰ.広汎性発達障害の診断(続き)

DSM-Ⅳ-TRではPDDの下位分類に自閉性障害,レット障害,小児期崩壊性障害,アスペルガー障害,特定不能のPDDの5つが含まれている。このうち代表的なものとして,自閉性障害の診断基準を表1 1)に示す。

世界保健機関(WHO)から出されているICD-10(Manual of the International Statistical Classification of Diseases, and Related Health Problems, 10th Revision)2)も基本的にDSM-Ⅳ-TRと大きな違いはないが,下位分類が少し異なっている(表2)。

 診断は対人交流,コミュニケーション,行動,興味,活動の限局したパターンの3領域の特徴とその程度によって行われる。対人交流では,共感性が乏しい,言葉を字義どおりに受け止めてしまう,冗談が通じないなどの異常がみられる。その背景には,他者の考えや対人場面での暗黙の了解事項を直感的に理解することが困難であることが想定される。コミュニケーションは,話し言葉の発達に遅れがみられる,遅れがみられない場合でも他者と共有できない独特の意味づけをもった言葉を用いるなどの異常がみられる。行動,興味,活動の限局した常同的で反復的なパターンとしては,特定の事柄やスケジュールなどへの強いこだわりや,特定の対象物の収集や,そのことに関する膨大な知識の蓄積などがみられる。診断基準に記載されている以外にPDDでしばしばみられる特徴として,聴覚,視覚,触覚などの感覚刺激に対する過敏または鈍感,粗大運動や微細運動の不得手,多動・不注意などの注意欠如・多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder;ADHD)類似の症状などがあり,むしろこれらの特徴のほうが社会適応上の大きな困難となっている場合もある。なお,DSM-Ⅳ-TR,ICD-10ともに,PDDの診断はADHDに優先することになっているが,実際には両方の特徴を兼ね備えていると考えるべきケースが多くみられる。
 確定診断のためには,養育者からの詳細な聞き取りなどによる乳幼児期からの発達状況の把握と,聞き取りや直接の観察による現在の行動様式に関する情報収集が必要である。

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